今こそ「美術」の力を。すべての人に必要な「アート思考」。
書籍情報
「13歳からのアート思考」/末永 幸歩 著/ダイヤモンド社/四六判338ページ/1800円+税
「美術」で何を学んで来たのか
著者は、知識・技術偏重の美術教育に問題意識をもち、大学の研究員として美術教育の研究に励みつつ、現役の教師として、アートを通して「ものの見方を広げる」ことを重視した教育を実践されている。
本書は、著者の「美術」の授業を受けながら、「美術」に対する見方や考え方を更新していく構成となっている。
目に見える「作品」ではなく、目に見えない部分を育む
著者はアートを植物に例える。地表部分には「作品」として「花」が咲き、根元には興味や疑問が詰まった「興味のタネ」。そこから生えているのが、「探究の根」。探究の根は、アート作品が生み出されるまでの長い探究の過程を示し、無数の根が複雑に絡み合っている。
「アート思考」は「興味のタネ」「探究の根」にあたり、「自分の内側にある興味をもとに自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探究をし続けること」とされている。
私はこれまで「花」にしか焦点を当てていなかったので、アートに対する見方・考え方が、大きく揺さぶられた。
「アート思考」の必要性
なぜ「アート思考」がすべての人に必要なのか。
それは、VUCAワールドといわれる、先行き不透明の世界を生きていくために、自分の見方で世界を捉え、自分なりの探究をし続けることが必要である、と説明されている。
答えが一つではないことに対して、柔軟な思考をもつことは、コロナ禍により様々な課題に直面している現代で、まさに必要とされている思考ではないか。
これからの時代にこそ
- 「作品」を生み出す過程が重要であり、興味をもったことを自分なりに探究していく力である「アート思考」を育んでいくことが必要。
- 「作品」に対して、事実と意見を往還し、言語化してアウトプットしていくことが大切。
- 激動する複雑な現実世界のなかで、「自分のものの見方」「自分なりの答え」をつくり出すアート思考は、すべての人に役立ち得るものである。
本書を通して、これから先の将来にも生きる、見方・考え方を磨くための教科が「美術」であることを実感するだろう。私も「アート思考」を身に付け、何歳になってもアーティストでいたい。