感じたことを音に。創ることの奥深さに迫る作曲入門書。
書籍情報
「作曲少女」/仰木 日向 著/まつだ ひかり まんが・イラスト/YAMAHA MUSIC ENTERTAINMENT HOLDINGS
「作曲」が身近な存在に
歌うこと、楽器を演奏すること、音楽を聴くことが趣味という人はいれど、作曲をすることが趣味、という人は珍しい。音楽の授業でも、合唱や器楽合奏、鑑賞の活動の記憶が残っている方が多いのではないか。
本書は、あまり身近ではない「作曲」について、「自分でもできるかも」「やってみようかな」と思わせてくれる言葉に満ちている。
著者の仰木日向氏は、フリーランスの作曲家。アニメ楽曲やゲームBGMを手がけている。世に出ている初心者向けの音楽理論書は、初心者には分かりにくいという課題が本書誕生のきっかけだったそう。
作曲が初めてという方にも分かりやすいし、音楽理論をかじったことがある、という方にもより理解が深まる内容。
理論書ではなく、理論を知りたくなる本
本書は、二人の女子高生の友情を描いたライトノベルという体裁。
本格的な内容を、専門知識がない人が読んでも分かるように表現が工夫されている。
例えば、「メロディ・歌詞・ベース・ハーモニー・リズム」という音楽を構成する要素を「主人公・セリフ・適役・脇役・世界観」と説明していたり、様々なキー(調)がある理由を、服装のコーディネートの色に例えていたりしている。
音楽を生み出す原動力となる言葉
「どんなに一生懸命努力したとしても、努力してるかぎり、夢中になってる人には絶対にかなわない。」
天才作曲家役の登場人物のセリフは、音楽好きなら共感できるものがいくつもある。作曲という行為には、表現したい思いや意図をもつことが大切で、何回も試行錯誤していくことが必要だと感じた。
特別なことから日常的なことへ
- 作曲は、自分が感動してきた体験や好きなことを、音で伝えることである。
- 自分の感じたことや価値観を信じて、失敗を恐れずにつくってみることが大切である。
- 知識や理論は、作曲ができるようになってから意味が分かってくる。
これまで音楽に少しでもふれあっていれば誰でも、作曲について親しみと興味が湧き、音楽の奥深さにハマるきっかけとなる一冊である。