音楽と教育

教育に携わる音楽好きな人間です。定期的な更新が目標です。

音楽の授業の在り方

お勉強ができなくても・・・

 私たちの社会では、国語、数学、理科、社会、外国語といった受験科目と、音楽、体育、美術、技術家庭といったいわゆる技能教科との二項対立の図式が、なかば一般化してしまっているのではないでしょうか。

 お勉強と芸術、知性と感性は別物、と捉える社会通念が出来上がってしまっていると肌で感じています。

 最近、「STEAM教育」や「リベラルアーツ」などといった言葉を目にすることが増えました。常々、教育における芸術の立ち位置に疑問をもっていた私にとっては、我が意を得たりとは自惚れが過ぎますが、よい時代になってきたなと感じています。

 本書は、科学と音楽を高度に融合させたMITのカリキュラムのレポートを通して、音楽の可能性を再発見させてくれます。

人気の音楽科目

 4000名ほどの学部生の中で、毎年1500名ほどの学生が音楽科目を履修しているとのことです。しかも、この10年で音楽科目履修生が50%増加しているのだそう。高校になると芸術科目が必修から選択になってしまう日本は目も当てられません。 音楽でどんなことを学んでいるか、学部生の声はこちら

  • 音楽とテクノロジーの融合 声の探求
  • ギターのサスティナビリティ
  • ピアノのメカニズム
  • 音楽の推奨システムについて。iTunesspotifyなどの比較

と多岐に渡る研究。自ら演奏する授業も多数あるそうです。うーん、楽しそう。

AI全盛の時代だからこそ、人間らしさを

過去を検証し、現在を理解し、未来の方向性を考えるとき、コンピュータによる近道はありません。人間によるクリティカル・シンキング(批判的思考)が基本です。

 本書で紹介されている教授の言葉ですが、なるほどその通り、どれだけテクノロジーが発達しても、使うのは人間。「なぜ?」に対して多様なプロセスで考えることができるのは、人間の強みだと思います。

いま・ここにあるものの奥に何を見るのか

考えてみれば、作曲家たちはそんな自然界の音や自分の内なる声に従って、音楽を書いたのである。それは、その奥に深く広大な世界を見出したからではないだろうか。自分や他者の心を敏感に感じ、自然や環境を感じとるー感受性は、観察力でもある。

 人は何気なく日常を生きています。目の前に立ち合わられたこと・モノに対して、じっくりと向き合い、何を気付くことができるのか。徹底的な観察力が科学でも音楽でも大切だと著者は述べています。

 そういえば、音楽に限らず、素敵なモノや言葉をつくる人って、何気ないことでも視点が鮮やかで、自分では気が付かなかったなぁ、と思うこと多々ありました。

 いつか日本も、文系・理系・偏差値にとらわれず、音楽を学べる環境になればいいなぁ・・・。